令和 7 年度の教員資格認定試験(高等学校教諭一種免許状:情報)に合格しました。本連載では、現役の IT エンジニアが働きながらどのように対策を立て、合格に至ったのか、その過程を記録として残します。令和 8 年度の同試験の願書受付は既に開始されていますので、受験を迷われている方や対策を開始されている方の参考になれば幸いです。
第 3 回の投稿では、第 2 次試験の概要と、傾向と対策についてまとめます。
ただし、大前提として、第 2 次試験の内容の開示は禁じられています(少なくとも私が受験した年の、第 1 次試験のあとに送付された「第 2 次試験の受験の心得」にはそう記載されていました)。そこでこの記事では、公開情報から類推可能な内容に関して、私が分析・対策した内容についてお話します。
第 2 次試験の概要
試験の詳細は必ず最新の受験案内をご確認ください。
- 期日: 令和 8 年 9 月 6 日(日)
- 試験内容: 教職への理解及び意欲、高等学校(情報)教員として必要な実践的指導力に関する事項
- 試験方法: 学習指導案作成、模擬授業、口頭試問(個別面接)等
おそらく、試験内容の「教職への理解及び意欲」は口頭試問で、「高等学校(情報)教員として必要な実践的指導力」は学習指導案作成および模擬授業で、それぞれ確認されることが想定されます。
また、第 1 次試験の合格発表は 7 月 10 日なので、第 2 次試験の準備にあてられる期間は約 2 ヶ月ということになります。
なお、第 1 回の記事の中でも言及しましたが、私が受験した年(令和 7 年度)の最終的な合格者(56 名)に対して、第 2 次試験の会場にいたのは 60 名ほどだったと記憶しています。ですので、第 1 次試験を突破できれば、あとは奇をてらわずにしっかり対策していくことで、第 2 次試験も十分に突破できるはずです。
基本的な対策の方針
まず、第 2 回の記事の中で言及した考え方を、第 2 次試験の対策方針の出発点とします。 つまり、国がわざわざ高校情報の教員資格認定試験を復活させている以上、人材の確保に積極的であると推測できます。言い換えると、試験は「最低限の基礎教養や適性が身についているかの確認作業」であり、意地悪な奇問を出して受験者をふるいにかけるためのものではない、という考え方は、第 2 次試験の対策においても有用だと考えます。
ただ、第 1 次試験と違うのは、分析すべき過去問が公開されていないことです。では、最低限おさえておいて欲しいと出題者が思っている領域は、どこを確認すればよいでしょうか。私は、文部科学省が公開している各資料であると考えました。
したがって、学習指導案や模擬授業の対策としては、あまり我を出そうとせずに、公開されている手引やサンプル等に忠実なものを作成・実施できるようにすること。そして口頭試問の対策としては、自分が作成・実施したものの意図を説明できることや、教育界のホットトピックに関する自分の考えを表明できるようにすること。を基本的な方針としました。
学習指導案の対策
学習指導案のサンプルは、上記の情報源から辿れる実践事例:文部科学省に掲載されています。これを見てみると、「単元の目標」「単元の評価規準」「単元の指導計画」「本時の目標」「本時の評価規準」などのセクションがあり、これらの紐解きが必要になります。
この紐解きには、高等学校学習指導要領 情報科関係資料:文部科学省の中にある、「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 高等学校編の第 3 編が詳しいです。ただし、その理解の前提には第 1 編、第 2 編の内容があるため、それらについても順に確認します。
学習指導案の仕様の理解(要件定義)
第 1 編および第 2 編の内容は、エンジニア的に言えば「要件定義」の部分です。要は、学習指導案作成の根底にある概念(学習評価、評価規準)を理解するフェーズです。
第 1 編では、学習評価そのものの考え方についてまとめられています。これまでの課題として、教師ごとに評価方法がバラバラであったり、期末テストのみの評価になってしまっている等の問題がありました。そこで現在の学習指導要領では、教科(情報科)や科目(情報 I)に設定されている目標を、どの程度達成できたか(評価規準)によって 3 段階の絶対評価とすることになっています。 また、この評価は、【知】知識・技能、【思】思考力・判断力・表現力、【態】学びに向かう力・人間性、の 3 つの観点ごとに実施することとし、最終的な評価(評定)は、それらを総括した 5 段階評価とすることになっています。
第 2 次試験との関わりで言うと、本番で作成する学習指導案に記載する「学習評価の仕方や規準」が、ここで説明されている各観点の概要や評価の仕方、注意点などに即したものである必要があります。
第 2 編では、評価規準の作成手順が紹介されています。目標は学習指導要領で定められていますが、評価規準は各学校の実態に応じて定めることとなっているためです。 ここでは、教科の目標 → 評価の観点のサンプル → 科目の目標 → 内容のまとまり(情報 I の場合は 4 つ)ごとの評価基準のサンプル、と細分化していく流れが解説されています。
第 2 次試験との関わりで言うと、学習指導案に直接これらを一から自分で書くわけではないと思うので、丸暗記の必要はなく、全体から詳細へと落とし込む流れさえ掴んでおけば十分だと思います。
学習指導案の作成方法の理解(基本設計・詳細設計)
第 3 編は、エンジニア的に言えば「基本設計&詳細設計」の部分です。
第 3 編の前半部分では、第 2 編の続きとして、単元の粒度での評価規準の作成手順が紹介されています。単元とは、内容のまとまりをさらに細分化したもので、複数の授業で構成されます。具体的には、学習指導要領や評価規準をベースに、前単元までの生徒の実態や学校の方針などに合わせて、単元の目標および評価規準を作成します。それを踏まえ、各授業で何を扱い、何をどう評価するのかを計画します(これが単元の指導計画です)。
第 3 編の後半部分では、それを踏まえて、各授業の目標や使用教材、50 分のタイムスケジュール、評価方法や規準(A, B, C の規準や、C の場合のリカバリ方法など)に落とし込んでいきます。これが、いわゆる本時の学習指導案です。
第 2 次試験との関わりで言うと、試験が 1 日で終わること、その中で数十人が模擬授業や口頭試問まで実施することを考えると、学習指導案の作成にかけられる時間はせいぜい午前中いっぱいというところでしょう。 となると、前半部分(内容のまとまりを単元に割る、単元ごとの目標および評価基準を作成する、単元の指導計画を立てる)までは問われないのではと推測できます。 つまり、「単元の指導計画」までは事前に与えられていて、「では 3 時間目の目標はどう定めますか? タイムスケジュールはどうしますか? 評価規準はどうしますか? それをどの時間帯にどの方法で測定しますか?」という、後半部分で説明されている内容(本時の学習指導案)のみを当日は作成するのではないか、ということです。 これだと、直後の模擬授業では自分で定めたタイムスケジュールの一部(冒頭 10 分や最後 10 分など)を披露すればよいので、他の試験方法とも整合します。
模擬授業の対策
模擬授業に関しては、おそらく作成した学習指導案に沿って、冒頭 10 分、中盤 15 分、あるいは最後 5 分など、どこか指定された部分を実施するのであろうと推測できます。もちろん、評価の公平性の観点から、あらかじめ用意された共通の学習指導案に沿った授業をさせられる可能性もゼロではありません。 したがって、そもそも模擬授業に向いた学習指導案を作っておくことと、あらゆる学習指導案でも適用できる模擬授業そのもののテクニックの両面について準備をします。
模擬授業に向いた学習指導案については、「投影スライド依存になるような計画にしない」ことが重要です。情報源の授業・研修用コンテンツ:文部科学省で紹介されているようなスライドサンプルやワークシートサンプルは、むしろ見ないほうがいいのではと思っています。 IT エンジニアはプレゼンに慣れているため、つい「美しいスライドを作って発表する」ことに意識が向きがちですが、教育現場の基本は「板書」や「生徒との対話」であるはずです。また、万が一プロジェクターが使えない、あるいはトラブルが起きた場合でも成立する授業(ホワイトボードと口頭のみでのファシリテーション)を想定しておくべきという、リスクヘッジの視点が必要でしょう。他にも、教室を想定するのか、PC ルームを想定するのかなど、何らかの条件が付与される可能性は十分に考えられます。
模擬授業そのものについては、徹底して学習指導要領に基づいたものにします。これについては学習指導要領【解説編】の「第 3 章 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い」が詳しいです。ここに書いてあるようなこと(他教科との関連付けや、実践的な能力育成、情報機器の活用など)をアピールできるようにします。 なお、細かいテクニックについては「模擬授業 コツ」などで検索すると多数出てきますし、関連書籍もたくさん出ているので、それらも参考になるでしょう。
口頭試問の対策
口頭試問については、AI と壁打ちしながら対策するのが効率的です。私の場合、当時のログを見ると、以下のような設問を想定して回答を準備していました。
- 志望動機・適性
- 自己紹介してください。
- なぜ「情報」科目の高等学校教員資格認定試験を受験しようと考えたのですか。
- これまでの実務経験や自己研鑽が、どのように教員としての資質の習得につながったと考えますか。
- 一般社会から教育現場に移る意義について、どのように考えますか。
- 「情報」科目の指導観・専門性
- 情報科の授業で最も大切にしたいことは何ですか。
- 情報社会において、高校生に欠かせないリテラシーやスキルは何だと考えますか。
- ご自身が得意な情報分野とその教え方の工夫を述べてください。
- 情報教育の重要性や社会的意義は何だと考えますか。
- 実務経験の教育現場での生かし方
- あなたの職業経験や社会での実践的な知見を、高校教育(情報科)でどう活用しますか。
- 技術や ICT 活用に関する最新の知識を、生徒にどのように伝えたいですか。
- 実社会での「情報」分野の具体的な課題を授業や指導にどのように反映させますか。
- 学校・生徒への対応力
- 生徒が情報モラルに違反した場合、どのような指導を行いますか。
- 生徒の多様な IT スキル差に対して、どのような配慮・支援を行いますか。
- チームでの協働や他教科・担当者との連携で意識したいことは何ですか。
- その他
- 生成 AI によって教育はどのように変わると思いますか?
- デジタル教科書についてどう思いますか?
- 効果的にタブレット端末を活用するにはどのようにすればよいと思いますか?
- 情報の教員を増やすにはどのような施策が必要だと思いますか?
注意点として、専門用語(アジャイル、スクラム、コードレビューなど)はそのまま使わず、「試行錯誤を前提としたグループワーク」「生徒同士の教え合い」といった教育用語に翻訳して伝えるようにしました。
また、全体的なスタンスとして、情報社会は変化が急であるという前提に立ち、その時点での知識(What)ではなく、どうやって問題解決をしていくかというプロセス(How)を重視する姿勢をアピールするようにしました。たとえば、「プログラミングの技術」そのものを教えること以上に、「エラーが出たときの論理的な原因究明(トラブルシューティング)の姿勢」を教えることが、実社会で役立つ情報教育であると伝えるイメージです。
まとめ
第 2 次試験は情報が少なく不安になりがちですが、文部科学省の公開資料という「仕様書」を正しく読み解き、そこから本番で求められるアウトプットを逆算することで、十分に対策が可能です。奇をてらわず、教育現場の基本に忠実な準備を進めることが合格への最短ルートとなります。
次回の記事では、時間を少し巻き戻し、第 1 次試験のマークシート対策として実施した「過去問の分析内容」について、より詳細にお話していきます。

